さて、ついに第二節にして大一番の試合となりました。
第二節はセリエA全体を見渡しても数多くのビックマッチの連続という中、
その中でも一番の注目度をおそらく誇ったであろう今回の一戦。
まずは戦力の配置図を確認してみましょう。
ローマは4-3-3 |
全体配置図 |
さて注目の試合結果は
インテル×ローマ 1-3 ローマの勝利
という形で第二節は試合を終えました。
まず前回と同じくこの試合を観て思った事を箇条書きで出してみようと思う。
- 注目のタクシディス、フロレンツィは攻撃面において良い働き
- タクシディスの視野の広さの再確認
- デロッシは前回に引き続きコンディションは不調
- アルバロ・ペレイラとのデロッシ、バルザレッティの接触沙汰が心配
- デストロと長友のマッチアップはデストロほぼ完敗
- デストロの右WGは良く悪くもという印象
- オスバルドはトップ少し下がり気味だが、攻撃面においてバランスの取れる良い動き
- トッティの圧倒的なクオリティの高さ
- 最終ラインの統率はカスタンよりもブルディッソだと思っている
- 前後半だけはいただけない展開
- アルバロ・ペレイラは色んな意味で中々楽しませてくれる選手となりそう
- 前半と後半では試合内容が違うものになっていた
- 後半で劇的に変わった、魔法という名の15分間のドレッシングルーム
前回と同じく、特にロマニスタの方は私と同じ事を思った人が沢山居るのではないでしょうか?
さて今回はまず試合後のゼーマン、ストラマッチョーニのインタビューから試合を大まかに振りかえってみるとしましょう。
ゼーマンの試合後のコメント
ゼーマン |
「開幕戦と中盤の2人を入れ替えたのは、ピアニッチの調子が良く無かったからだ。私はアグレッシブにボールを奪いすぐにスペースを探して逆襲に転じる中盤が好きだ。フロレンツィとマルキーニョはそれをする能力がある。
フロレンツィは、量だけなく質も備えたMFだ。
攻守両面において仕事をするし、何より大きな伸び代を残している。」
「トッティについては何も言うべきことはない。私にとってもは昔も今も偉大なプレイヤーであり、その能力には敬意を抱いている。左寄りのポジションから敵の2ライン間で良い仕事をした。あそこが彼のペースだ。」
※フットボリスタ様 のコメント欄より訳文を引用
ストラマッチョーニ試合後のコメント
ストラマッチョー二 |
「前半のほとんどと、後半の立ち上がりは、望んだ通りの戦い方ができていた。しかし1-2(後半ローマ追加点の後)の後はメンタル面で何かが機能しなくなった。失点の原因はオスバルドの走り込みに対応できなかった最終ラインのミスだ。」
「しかし私が一番残念なのは、その失点にショックを受け過ぎたことだ。ペレイラのパフォーマンスをはじめポジティブな側面も多かったが、チームとして修正すべき部分も少なくない。
例えば、前半はローマのカウンターに脅威を感じない場面はなかったが、1-2の後は強く感じた。それはチームが距離感を失ってカウンターにスペースを与えていたからだ。」
※フットボリスタ様 のコメント欄より訳文を引用
コメントから考える
まずこの両者のコメントを見て私が思った事は
ゼーマンの中盤に対する考え方 というものを私は感じ取る事ができた。
前回の①考察でも、ピアニッチの起用不起用の面に関しては色々書いたが、
やはり案の定コンディションが悪い影響もあっての今回は控えに回るという形になった。
そして代わりに起用されたのはフロレンツィである。
「私はアグレッシブにボールを奪いすぐにスペースを探して逆襲に転じる中盤が好きだ。」
単純な一言ではあるが、この言葉は今後ローマの試合を観る上、展望を考える上で是非とも参考にしたい重要な言葉だと私は思った。
ゼーマンの好みのチョイスであるのであれば、やはり前回も考察したようにフロレンツィは縦への推進力を備えた中盤として、ピアニッチの代役としては十分の選手なのだろう。
そもそも同い年のピアニッチとフロレンツィではあるが、
ゼーマンの中では既にフロレンツィ>ピアニッチ の評価になっているのかもしれない。
対してストラマッチョーニのコメントは上手い事試合の流れを表現してくれたと思う。
まさに私自身も彼とほとんど同じような事を試合中に思っていた。
これは試合を観ていた人なら納得のできるコメントではないだろうか?
このコメントを要約する分には、彼曰く
- 前半は狙い通りの展開(主にミリートへ裏を取らせる動き)
- 後半のローマ追加点から試合展開が大きく変わった
- 失点の主な原因は最終ライン(ラノッキア、シルベストレ)の不手際
- 追加点後はインテル全体のメンタル面の低下から来るパフォーマンスが落ちた
- メンタル面の降下によるローマのカウンターはまさに驚異となった
まさに分かり易い試合展開の流れだと言えるだろう。
コメントから考えるに、まさしく今回の焦点となったポイントは
- 後半から大きく動く試合展開
ローマ中盤のオプションに関しては①でも考察できたように案の定だったと言える。
しかし問題は後半から試合展開が大きく変わったという事だ。
まさにシンプルなポイントと言っても良いが、このポイント、そして二人の監督のコメントを頭に置いて今回は徒然考察していきたいと考える。
まずこのレーティング表を見て分かる事を箇条書きしてみる。
ローマ側
- トッティ全体で見ても最高得点の8.8
- 交代を含め、中盤はデロッシ意外上位得点名を連ねる
- SBのレーティングは全体的に見ても低い
- デストロ、ラメラの右WGの線は飛び抜けた活躍をできていない
- ステケレンブルフが同じく高得点
インテル側
- カッサーノとスナイデルの線は非常に機能していた事が分かる
- 前線はミリートが極めて低い
- 両SBはサネッティの採点が低い
- トリプルボランチ3人は合格点だろうとも言える点数
- CBはシルベストレに対して、ラノッキアが非常に低い点数を出している
第三節 インテル×ローマ の試合においてMOMは フランチェスコ・トッティであった。
トッティ |
ローマ側において今節の主役は間違いなく彼であっただろう。
- 全点に絡むアシストを2本
- ボールタッチ数はローマ内第1位
- 空中戦勝率100%
特にこの中でもローマ内のボールタッチ数に関しては抜きんでた結果を出している。
- 第1位:トッティ 93回
- 第2位:タクシディス 65回
- 第3位:バルザレッティ 55回
1位と2位とでは約30近くもタッチ数に関して差が開いている。
トッティにボールがこの試合を通して沢山集まっていたのだ。
彼自身のパフォーマンスと共に、結果的にアシスト2本を出す事に成功している。
おそらくサネッティの得点が低いのは、マッチアップしてるトッティ自身の機能を
止めれなかった事が大きいのではないかと考えられる。
SBに求められるキャパを考えた時に、無難にこなしている成果に対し得点率が著しく低い。
鋼の39歳サネッティさん |
フロレンツィ、タクシディスの快挙
フロレンツィ |
タクシディス |
①でも個人的に注目していた フロレンツィ・タクシディスのパフォーマンス。
今回彼等は大きな仕事をした。
レーティング表を単純にPtの高い順から並べてみると
- 1 8.8 トッティ
- 2 7.9 フロレンツィ
- 2 7.9 ステケレンブルフ
- 3 7.6 タクシディス
- 3 7.6 マルキーニョ(途中交代)
という結果になる。
MOMである1位のトッティとGKのステクを抜かしてみると、全て中盤に配置された選手達が
今回のレーティング結果による高得点あった。
今回先発で起用された中盤(左から フロレンツィ・タクシディス・デロッシ)
の内、前半途中交代で離脱したデロッシを抜かして投入されたマルキーニョも含めた
4人中3人は全レーティングの中でもトップ5に入るパフォーマンスであった。
フロレンツィ・タクシディスは両者共にに21歳の若手である。
ピアニッチの負傷から中盤の起用はかなり難色を示したが
共にセリエA経験0~1回の中でこの健闘は称えたいものである。
ちなみにインテル側のレーティングトップは フレディ・グアリンの「7.6」であった。
他にもグアリンが右に対して、同じくボランチで起用された新加入のアルバロ・ペレイラも「7.3」と高評価を獲得している。
このようにローマ勢の中盤と言わず、両チーム全体的にレーティング表を見ても
中盤が良い動きを今回の試合で出来たという事が一目瞭然な状態だと言えるであろう。
ターニングポイント
このように中盤は大きな鬩ぎ合いが行われていた。
現にストラマッチョーニも前半はローマに先制されたものの、自分達の攻撃の形自体は上手くできていたとコメントしている。
デロッシが前半の半ばに負傷交代をしてから、ローマの中盤は特に守備面のバランスを取る事ができずに、相手方に多くの得点シーンを与えてしまう事になった。
相手側が躍動する機会が増え、そして前半40分前後にカッサーノに同点弾を決められてしまう。
デロッシを欠き、追いつかれた状況で前半を終える。
ストラマッチョーニとしても自分達のやりたい事を出来ている状況で前半を終え、
このままインテルに押し切られてしまうのかと思われる状況となってしまう。
前半を終え、ゼーマンはある選択をした。
前半のフォーメーション 4-3-3 |
ゼーマンの魔法・トッティトップ下 4-3-1-2 への変更
後半フォーーメーション 交代枠3枚を使ってから 4-3-1-2 |
魔法というのは言い過ぎですね。(指揮官が故に選択する事は当然の事なので)
しかしここでゼーマンは試合展開を大きく変える選択をしました。
前半と後半とで変更点は主に2箇所ある。
- トッティがLWGからOMFへと配置を変更
- フロレンツィとマルキーニョのサイドを変更
- 攻撃の方法をサイドから中央集中へ
実に単純な配置変更となったが、これが大きな変化をもたらす事になった。
RWGで右に陣取っているデストロも左の長友には攻勢を止められている最中。
後半55分前後ではバルザレッティも負傷交代となり、タッデイが投入。
より一層了サイドからの攻撃が難しくなった中、トッティはトップ下の位置に陣取る。
トッティがトップ下に入る事により、デロッシが負傷交代で抜け、全体のパスワークの質が落ちたと同時に、パスを供給するポジションの定位置が定まらなくなる状況を改善。
更にトッティの両サイドのMFの推進力と運動量を前半時のように底上げする事となる。
サイドが実質機能していなと言っても等しい状況で
攻撃にする箇所というのは「中央」しかない。
ゼーマンはトッティを中心とした、中央一点集中に戦術を様変わりさせたのである。
結果的に攻撃のクオリティの底上げに繋がる事になった。
つまりトッティがトップ下に入った事により
- 中盤のパスワークが改善される事になった
- 中央でボールをキープする時間が増える事になった
- 上手い事デロッシの役割を兼任する事に成功した
- 両サイドの中盤が前へ出易くなった
- トッティを起点にカウンターをし易い状況になる
更にマルキーニョを本来の左に配置する事により
- マルキーニョ本来の飛び出しと推進力の能力をトッティと兼ね合わせて生かす局面が多々増える事になった
- 左全体の運動量と攻撃力を高める事になる
など実は攻撃面というよりも、とにかく中盤の質の底上げに大きく貢献した事になった。
それは結果的に攻撃面の改善にも繋がったのである。
中央と左を使った攻撃 |
実際中央起点に戦術を変更後は
- 右のデストロは(ボールキープの出来る)ラメラと交代
- 交代後のラメラはサイドからのドリブル突破を狙わずに中央へボールを供給
- RSBのピリスもポジショニングを後衛寄りに定めていた
- LSBのタッデイも上がらずにピリスと同様のポジショニング
ゼーマンはサイドの蓋を閉じた事が分かる。
しかし同時にゼーマンとしてはデメリットも抱える事になる
バランスを確保する為に両サイドの攻撃はRCM、LCMに一任する為
SBの攻撃参加を切り捨てざるを得ない事になり、中盤でボールを持つ展開が多々増える。
結果的に中盤でのインターせプト合戦が繰り広げられる展開が大きく予想される事になり、一層中盤でのインテル方のボランチとの鬩ぎ合いが加熱する可能性があるのである。
これに加えてカウンターが更に狙われ易い状況に身を投じる事になってしまう。
更にはカウンターをできるだけ回避する為に中盤は攻撃と兼任して、プレスを一層かけていかなくてはならない事になるのは目に見えている事なのである。
どの作戦や戦法や戦術にもメリット・デメリットは存在するのは当たり前だが、
ここはある意味大きな賭けだったと私は思っている。
特にデロッシを負傷で失い、続けてバルザレッティも負傷。
前半よりも一層MFのタスクが増え、インテルの屈強なフィジカル陣営に対しては
疲労からの怪我人を更に輩出するというリスクは大いに有り得ただろう。
しかし采配には計算された箇所もあると思っている。
そもそも4-3-1-2 というのは昨季までローマが施行していたフォーメーション。
トッティはルイス・エンリケの下、トップ下を11/12の間はこなしてきた。
彼自身も昨冬の雑誌のインタビューで「ようやくトップ下に慣れてきたところだよ」
という発言をしている。
待たせてごめんね |
現に昨季のトッティはシーズン前半はコンディションと慣れないポジションの為か
良い成績を残せず、ティフォージとローマの成績にとって大きな打撃を与えてしまっていた。
しかしシーズン後半になりようやくコンディションも戻り、彼自身もどっぷりとOMFというポジションのコツというものを獲得し始めてきた。
その矢先にゼーマン就任後、LWGという左を一任する役職にトッティを戻す事になった。
だからこそゼーマンはトップ下の適正をようやく獲得したトッティを後半トップ下に起用し、エンリケポゼッションとはまた違う戦法ではあるが、同じ4-3-1-2 というトッティ起点の戦術へシフトしたのではないかと考えている。
加えてマルキーニョとフロレンツィはゼーマンのコメントからすればゼーマンがお気に入りであり、好きなタイプの選手だ。
不本意な交代での投入となってしまってはいるが、この二人を両サイドに並べた時に前衛へ攻め上げる攻撃の駒にせず、何をするというのだろうか。
実際ゼーマンがそこまで考えてるとはあまり思えないが、私自身ある意味この試合を見て、後半トッティが下がり目でトップ下の位置に陣取っているところを見た時に、とても昨季を思い出すような感覚になり、胸が熱くなりました。
結果的に OMFシフトは大成功を収める事に
後半に入ってからも予想されたインテル陣との中盤でのフィジカル合戦は、
見事にパスワークという方法により接触は回避され、後半60分過ぎからはローマがインテル側のボールをインターセプトし、カウンターを見事に仕掛けられる機会が増えました。
上記にも書いたように、ストラマッチョーニも言うように
「1-2(ローマ追加点の後)の後はメンタル面で何かが機能しなくなった。失点の原因はオスバルドの走り込みに対応できなかった最終ラインのミスだ。」
トッティのフライスルーからオスバルドが得点した後半67分。
そこからの試合展開は試合終了までローマが一方的にボールを持ち、インテル最終ラインのミスを誘い出すようにして、中央から前線へボールを繋いでいく過程が多々増える事になります。
結果的にトッティ起点のボール支配は、インテルのトリプルボランチからのボール奪取を上手い事やり遂げ、最終ラインのシルベストレ・ラノッキアのDFラインの三スを誘い出し、DFラインの統制を崩す事に成功した。と言っても過言ではないでしょう。
感想
とにかく観ているこちら側としても、前半終わり際は「後半これ大丈夫なのか?」
と不安で仕方無く終わったインテル戦前半終了時。試合を終えた後、何度もこの試合を見返しても、本音を言えば「アウェイでよく勝てたよな」と思える。
実際前半は本当に多くの決定機がインテルにはあった。
ミリートの裏抜けも、スナイデル・グアリンのミドルも、長友の突破からのシュートも、下手すれば前半で決着がついてもおかしくなかっただろう。と思えるくらい、本当に惜しい且やられてたシーンだらけだった。
今でも思い返せば本当に危機一髪だったと思っている。
やはり単純に「攻撃が上手くいった」から勝てた のだろうと私は思う。
勿論ローマのDF陣も大変よく頑張った。
カスタンにして見てみれば、パス精度は100%であり、実力者揃いのインテル相手に
セリエA デビュー2試合目にしてよく対応できていたと思っている。
ニコ(ブルディッソ)に関しても、しっかり危険察知を行い、ライン統率をしっかりとこなしていた。
ステクさんもチーム内ではレーティングはフロレンツィに並び、第2位。
何度も好セーブを連発していたと思う。
やはり守備陣が崩壊せずに居た事も非常に大きい。
毎度の試合を見てると、「DFライン統率して無さ過ぎ」「中盤フィルターかかって無さ過ぎ」などどうしても守備陣に関して、多くの事を要求したくなってくる。
しかし今節は「本当にバランスの良い展開で在れた」 と私は思う。
そして「フロレンツィ」「タクシディス」両名は本当によく頑張った。
この異常とまでも言える中央戦線の中、よくぞ戦い抜いたと思う。
セリエA デビューして0~1回の二人がここまで試合展開に貢献してくれるなどとは考えても無かった。
それだけにより一層次節からの期待が高まるところ。
次節ボローニャ戦が本当に待ち遠しい。
インテル戦での勝利をチーム全体の糧に、是非とも更に高みを目指して欲しいと思います。
Forza!Roma!(見辛い)