先日 La Gazzetta dello Sport が自社のWeb上であるアンケートを取った。
Q「この現状を打破する為に、ローマがすべき事は何か?(戦術的な意味で)」
様々な意見が有った中で、その集計結果でもっとも多く見られた答えが
A「精度の高いカウンターを狙っていく」
という結果だったそうだ。
加えてもう一つアンケートを取り、
Q「ゼーマン支持派orアウレリオ支持派か?」
という問いに
A「ゼーマン支持派」64.9%
「アウレリオ支持派」35.1%
このような結果となった。
第24節サンプドリア戦
※この記事は戦術分析でも何でも無い、フィーリング要素大の記事です。
勿論の事ですが、ローマ贔屓での目線で色々と書いているのでご了承ください。
先日行われたサンプドリア戦は新監督アウレリオ・アンドレアッツォーリの元で、
ローマはゼーマン解任後の新体制初となる試合となった。
アウレリオ・アンドレアッツォーリはこれまで自身が提唱してきた「4-2-3-1」からのシステム変更を今回敢行し、3バックシステムへ移行。
彼の初陣は「3-5-2」という配置で初戦を挑む事になった。
布陣は以下のようになっている。
3バックをする際に試合前注目点が有る
- 今季一度試した3-4-3では無く初起用の3-5-2
- 両翼となるマルキーニョ&ラメラのWBでの起用
- デ・ロッシ&ステケレンブルフの先発での復帰
しかし結果的にこの試合は3失点を喫して、敗北という形で試合終了をした。
敗因原因を自分なりに簡単にまとめてる。
・考えるべき失点シーンはRWBのマーキング対応のミス
綺麗なドフリー |
ゼーマン政権時に4-3-3のWGとして職を任されていたエリック・ラメラ。
システム上サイドの後方にはSBが居る為に、当時はセンターサークル以上での攻撃が主な仕事されていた少し前の彼だが、今回3バックを敢行した為に同じサイドといえど、仕事が全く違うのは存知の通りだと思う。
これは今回その違いが完全に露呈されたシーンの一つのシーンとなってしまった。
RMFであり、少なくとも3バック時はWBとしても動かないといけない箇所に配置されている以上、部分的に言えばこのシーンはラメラがサンプ側がボールを持ってショートカウンターを仕掛けるとなった際に、少なくとも黄色丸で囲んだエスティガリビアに対してマーキング対応の仕事をしなければならないシーンなのは間違いない。
この後このシーンでボールの持っている ジャンルカ・サンソーネ から黄色丸のエスティガリビアにパスが通り、マルキーニョスがボックス内でギリギリの対応をするも、シュートを放たれ綺麗にゴールが決まってしまう結果となった。
しかし結論から言って、全体的に観れば彼はそのWBとしての仕事をしっかりこなしているという事実は頭から離してはいけないという事を書き留めておきたい。
彼のWGであった時の自分の定位置に関して頭を少し切り離し、常に高い位置にポジショニングしているという訳は全く無かった。
前後半共にWBとしての仕事をこなしていたのである。
しかしそれは同じ右に位置しているマイケル・ブラッドリーのサポートも有っての事だろうとも私は考える。
まだ一人前に3バック時のRMFをこなしてたとは正直良い辛い点は有る。
WGの位置であればタックル勝利数というのは基本的には減るものだが、彼はこの試合誰よりも敵の選手に身体を入れてディフェンスをしているのは、表を観れば一目瞭然だろう。
しかし皮肉な事に、嫌な言い方をしてこの時に本来FWであるラメラが守備を「サボった」シーンが最大の失点シーンに直結してしまったのである。
前半においてはサンプドリアの枠内シュート本数を1に抑え、2枚のボランチと3枚のCBの安定したバイタルエリア前の守備形成をできた事もあり、反転攻勢する際のカウンターは非常に上手い事そのシステムを活かす事ができていた。
そのショートカウンター時の際も彼は右サイドから中央エリアにかけての攻撃の起点となり、中央のピアニッチと連携して多くの得点機を作り出した。
この試合ではラメラの総合スタッツは両チーム合わせて1位。
見方次第では彼のWBとしての初陣は成功を収めたと言っても実は過言ではないのだ。
しかし先程も書いたように、一つのミスが相手に決定的な瞬間を与えてしまったのである。
残る失点は二つ
- バイタル前よりFKの位置を与えられた、ジャンルカサンソーネのFK。
- セットプレー時にデ・ロッシがイカルディに競り負けヘディングゴール
こうしてローマは3失点を喫した。
ただここで悲観的に考えてならないのは、1失点目を除くこの2失点。
確かにデ・ロッシが競り負けたのは不味い事だったかもしれないにしろ、相手はボックス内での動き出しとヘディングに大きく定評の有るマウロ・イカルディ。
75分カスタンの負傷により、最終ラインにやむおえず下がったデ・ロッシは、シフトされる前のボランチとしてインターセプト数だけで言えばチーム最多という数字を記録している。
更に先日行われたオランダ戦でもデ・ロッシはあまりコンディションが良いとは言う事のできないパフォーマンスから、週末の試合を迎える事となった。
しかし彼は私の観る限り決して悪い出来であったとは思えない。
今回ローマでの先発での試合が久しぶりという事に加えて、ミッドウィーク明けの体力面、試合ではローマでのインターセプト数最多をマークした中盤のフィルターとして、しっかりコンディションを戻して試合に挑んでくれたと思っている。
しかしこれもまた皮肉な事に、競り負けた一度の瞬間が失点シーンに繋がった。
ただブログ主はイカルディが実は大好きなのです |
結論から言って、この試合を3試合見直しをしてこれらの失点シーンから逆算して考えて思うのは(細かい連携面を除いて)この約1週間という短い時間ながら私はシステム的にローマは3バックを使った「3-5-2」をある程度遂行できていた印象を受けたという事。
酷評される程、3バックシステムが機能していなかった訳では無いと考える。
攻撃面
ゼーマン政権が終わり、新システムでどのような攻撃展開をするのか?
観た感じに思ったのは
ショートカウンター&敵陣内でのハイラインを形成したポゼッションサッカーの複合型。
中央のダブルボランチが、トップ下・両サイドの3人にボールを送り、その3人が攻撃の起点となって前線と連動してショートカウンターを仕掛けつつ、敵陣内でボールポゼッションをできてる際にはCBとボランチも同時にハイラインを形成して波状攻撃を仕掛けて行くという戦術。
試合中、試合後と考えていたのだが、どうもこのサッカーには非常に愛着を覚える。
よくよく観てみるとやってる事は「スパレッティ+ゼーマン」の複合型システム。
という印象が最初に浮かび、適当ながらもそのように感じた。
寧ろ観てるサッカー自体はゼーマンとあまり差異が無かったようにも感じる。
これに関しては残り数試合を観てしっかりシステムの分析をしたいと考えているが、少なくとも守備時のライン形成に関してはゼーマン政権下の時よりはしっかり確立されているし、尚且つ攻撃時のディフェンスライン自体も非常にハイラインを形成しているのである。
詳しく絞って言い表すのであれば「ゼーマンのシステムに安定度を更に加える為のボランチを追加したシステム」と言えるような気もした。
とは言うものの、今語った事は完全に独断と偏見とフィーリングで書いた事では有るので、実際には違うようなゲーム展開をしたいのかもしれない。
それは今後の試合を観て正確に考えていきたいところだろう。
この試合、個人的に攻撃に関しては非常に良かったと思う。
初陣にしては攻撃時の動き出しと、選手個々の縦へ流れる流動性はしっかりと動きとして出ているようにも見受けた。
しかしこれも皮肉な事にこの攻撃システムで決定機を多く演出するも、最後の最後で個々が決め切る事ができなかった(最後決めるだけ的な意味で)
まとめ
総じてこの試合を観て思った事は
- 攻撃面はしっかりと機能していたと考える
- 3バックシステムの出来は失格点を与えられる程のものでは無かった
- 悪い要素が一度に絡まってしまった(贔屓目無しに本当にそう)
- アウレリオの交代はしっかりと的を得ていた交代だと思えた
と徒然とざっくばらんに思った。
そして一番最初のガゼッタのアンケートの件に話が戻るのだが
ゼーマンサッカーに多く有るようで無くて、現状の攻撃システムで大きく機能させなければならないという点が「精度の高いカウンター」という事。
アンケート結果の答えである「精度の高いカウンター」というのは決壊した守備システムへの不信感と、安定した得点率を生む為に導き出される答えとしては正しいと思う。
3バックを敢行しようがしまいが、現状アウレリオ・アンドレアッツォーリが中盤の底を2枚配置する戦術なのであれば、やはりカウンターというのは必ず磨いていかなくてはならない要素の1つになってくるのは間違い無い事だろう。
今節の結果から、そのカウンターの精度不足も今後の課題点の1つだろうと思う。
加えてカウンター以外の攻撃の仕方(寧ろこちらがメインの攻撃戦術として現状担っている気もするが)も考えていかなければならない。
ゼーマン政権時からもそうなのだが、波状攻撃を仕掛けるサッカーをする上でやはりセカンドボールの回収をしっかりする事、縦へ送るパスの精度を上げる事、そして敵陣内では基本的にボールをカットされないようにしていかなければならない。
逆にカットされればこれは相手にとって大きなチャンスになると共に、ローマにとっては前線にポジショニングをしてる人間達も再びディフェンスラインへ戻らなければならない。
寧ろ「ローマのサッカー」だからと言う次元の話でもなく、どのチームにおいてもこれはボールを持って試合を運ぶ上でこれ等の事は、勝つ上での基本中の基本にも思える。
現地では未だに約7割のファンがゼーマンを支持するのには必ず理由が有る。
- 面白いサッカー
- 得点が生まれるサッカー
- 攻撃的な戦術敢行
- 育成上手
思い付いたものを4点挙げてみたが、少なくとも上記以外のも沢山の事を挙げれるだろう。
ただ私はそのような事を抜きにしても絶対的に支持される理由が有るのだと思う。
ハイラインを全体的に形成して、両SBと両WGの圧倒的な推進力と創造力を武器に、敵陣内で幾度の波状攻撃を仕掛け続けるというゼーマンのサッカーというのは絶対的に過言かもしれないにしろ、有る意味での究極系で有り、そこには試合を支配してゲームメイクをする上での多くの基本が詰まっているのではないだろうか。と私は考える。
ここまでファンは考えていないかもしれないにしろ、何よりも彼には「ミステリアスで魅力有るサッカーを作り出す事のできる可能性」みたいなものを感じるのである。
少なくとも私はそう思って、試合の度に試合を通して、彼のチーム作りを観ていた。
賛否両論は有るにしろ、多くのローマファンも色んな事を差し引いて、彼のサッカーへの魅力を少なからずは感じていたのではないだろうか。
難しい事を考えずとも、ただそのようなシンプルな理由に帰着する気もする。
これからアウレリオ・アンドレアッツォーリは残りの後半戦、少なくともコッパを入れて16試合は最低でも戦ってかなくてはならない上に、現状の順位を上げつつも、チームの育成に着手していかなければならない辺り、非常に難しい局面に立たされる事になるだろう。
今節の試合でもやはりゼーマンの色は本当によく出ていた試合運びだったと私は感じる。
それが今のローマにとって良い要素として蓄える事にもなれば、アウレリオが新しいチームを作り出そうと考えているのであれば、悪い要素として働く事にもなるだろう。
彼はゼーマンをリスペクトするのか、全く新しい何かを作り出すのかは未だ分からない。
それはこれからの試合を観てく事で必ず分かってくる事だと思う。
自分達のやりたいビジョンと、それに合わさってチームが一丸となれば必ず成果は結果として付いてくるはず。
今日の記事を書いた事を踏まえ、考え、この初陣を悲観的に少なくとも私は観ていない。
これは希望的観測でも有るが、この試合を観て直観的に思った事でも有るのだ。
それ等は何を根拠に言うかは、この記事に徒然書いた事全てでもある。
これからアウレリオが陣頭となり、再生するローマの姿を信じようと思う。
少なくとも私はローマファンを自称しているので、今後そうなる事を願っている。