まずスターティングメンバーの再確認をしてみる。
図1 |
さて注目の試合結果は
ローマ×カターニア 2:2 ドロー
という形で90分間の試合を終えた。
まず試合を終えて単刀直入に思った事を徒然箇条書きしてようと思う。
- 個人的に着眼点だった両SBの動きは上出来
- トッティのコンディションはかなり良好そう
- トッティとバルザレッティの連携は目に見張る素晴らしい出来
- ピリスのクロスはワロス
- ピリスのビルドアップの能力の高さとバックリターンの速さの確認
- バルザレッティの攻守に長ける動きはローマでも健在
- ラメラのペナルティエリア内でのパフォーマンスは非常に良い
- ラメラの守備のサボり具合
- オスバルドのポストプレー能力の向上
- ブラッドリーの上下運動能力の高さ、相手ペナルティエリア内への侵入の多頻度
- デロッシのセンターサークル内の付近でのポジショニングの悪さからの、裏取られ
- レアンドロ・カスタンの安定した守備、バックラインからのパス精度の高さ
試合を観た人は私と同じような意見を持った人が多いのではないでしょうか。
さて上の思った事を頭に入れつつ
ここから詳しく試合後のレーティング結果などを少し参考に考えたいと思う。
図2 |
まず全体的な感想から
全体的に見れば攻撃全般はよく出来ていた試合だった。
前政権のL・エンリケの時にボールポゼッション率を高め、敵DFエリア内でボールを回し続ける
という試合展開を持ち込もうとしていた。
今回の開幕戦の立ち上がり、とにかくMFを含んだ攻撃陣のラインが高いのが印象的だった。
ハイラインというと、これはL・エンリケローマの時とも同じ光景に似ているものでもあるのだが、
まさにゼーマンローマが昨季と違うのは
- MFとFWでボールのやり取りをする間に、SBがパスワークを受ける介入をする事。
- SBのビルドアップ能力を極限に稼働する事。
さて、試合中の各選手の平均的なポジショニングの箇所を見てみよう。
図3:ローマの選手の平均的なポジショニング箇所 |
対してカターニア側
図4:カターニアの選手の平均的なポジショニング箇所 |
まずローマ側は23番と42番の両SBの位置に注目する。
言わずもがな、早速前回紹介したSBの比重を象徴するかのような形になっている。
しかしあくまでこのオフェンシブエリア寄りの中央停滞というポジショニングは、
ポジショニングの平均が中央=上下運動がよく出来ている証拠である。
つまり攻守のバランスかなりこの戦術にとって良い具合を醸し出しているとこれは思われる。
23RSB、42LSB共に斜め前の8RWGと10LWGとの距離感なども
パスワークが頻繁に行えるような距離であると考える事もできないだろうか?
さて、客観的に物事を考えるならデータを用いるのが手っ取り早い!
セリエA1年目の開幕戦にしてスタメンでの起用となったRSBのイバン・ピリス君。
彼は早速セリエAでも現在屈指の攻撃的なMF兼左WGのアレハンドロ・ゴメスとリーグデビュー戦で
対面する事になりました。
図5 |
まずこの試合のマン・オブ・ザ・マッチは図2のレーティング表を見ても分かるように、
総合値8.6のアレハンドロ・ゴメスでした。
ピリスのデータを見ても分かるように、ボールタッチ数は75回。
これは今試合のローマの面子の
ボールタッチ数の中でも
- 1位デロッシ 89回
- 2位イバン・ピリス 75回
- 3位バルザレッティ/トッティ 72回
とローマの中でも第2位のボールタッチ数を誇っています。
その下のバルザレッティもトッティと並び第3位を誇っています。
しかしそのボールタッチ数と比較して、パス正確度はチーム内でも下から数える順番です。
これは5回中2回しか成功しなかったクロスにより、落とした割合ではないかと思います。
つまり前向きな見方をすれば、アレハンドロ・ゴメスと対面するタスクを背負いながらも、攻撃の主軸となるボール運びを任されているのです。
そう考えるとピリスはデビュー戦といえど、大変素晴らしい活躍をしたのではないかと思います。
さて対してLSBのバルザレッティの方を見てみる事にしましょう。
図6 |
この試合バリエントス、正確度、タッチ数、などの極めて低い点から7を下回り6.9。
シュート数とポジショニングによるディフェンス押し上げを淡々とこなしていました。
しかしその評価を下した元は単純に考えられるのはバルザレッティの存在ではないでしょうか。
バルザレッティのこのデータから分かる点が3点程あります。
- パス成功率は、ローマの面子の中でも94%で第1位
- 空中戦の勝率は、ローマの面子の中でも100%
- ボールタッチ数は、ローマの面子の中でも72%で第3位
このデータを見ただけでも、とんでもなく活躍してる事は一目瞭然でしょう。
個人的にこの6,7という数値は不服だったりもします。
やはりボールタッチ数がピリスに次いで第3位という事に加え、パス成功率94%で1位というのは
ある意味左の主軸戦はバルザレッティだったと考えてもおかしくないでしょう。
総合的に見れば RSBのピリスもLSBのバルザレッティも仕事をしている事が分かります。
むしろ相方となる RWGのラメラ、LWGのトッティも彼等よりも高い評価を受けています。
特に我等がフランチェスコ・トッティはドリブル成功率は第一節を終えた、
セリエAの中でも第一位の成功率でありました。
ではなぜ核とされる4人が一級線の活躍をしていたのにも関わらず、この試合2点という点数で
終わってしまったのでしょうか。
私の分析をした結果、思った事を書いてみるとします。
図7:バイタルエリア |
まず実際の試合を見ても、データを見ても思った事は
何故両サイドが比較的機能してるにも関わらずに、得点に結び付かなかったのかという事。
- デ・ロッシのフィールドポジショニングとパス精度が不安定という事
- バイタルエリア内での動きが全体的に悪かったという事
- 全体的に多くの決定機を逃してしまった事
- 中盤全体のボールタッチ数が非常に少ないという事
- ピアニッチ→フロレンツィの交代は妥協案でしかなかったという事
- マルキーニョのRWG起用の失敗による右サイドの攻撃事実上の崩壊
という要素があって、より多くの点に結び付かなかったのではないかと僕は分析します。
この試合実は核となる4人の背後で、その彼等をサポートする中盤が主にブラッドリーを除き
全体的に攻守においてバランスを多く崩していました。
中盤の中央で攻守のバランスを取る、デ・ロッシのバス成功率は フロレンツィと並んでチーム内でもワースト第3位。しかもそのワースト1位というのは、前線の的であるオスバルドとなります。
- 実質パスワークを作り出す役割であるデ・ロッシが、チーム内ワースト3位(実質2位)というのは褒めれるよな活躍であったとは言えません。
- 更に守備面ではボランチのような役割を担っているにも関わらず、敵からインターセプトを多くされていました。
- ボールタッチ数はローマ内第一位なのでデロッシにボールは一番集まっている。しかしパスは思う様に通す事ができない=上手い事起点になりえたとは言い切れない。
しかし彼は一点目のオスバルドのファンタスティクオーバーヘッドの素晴らしいアシストをしたり、
ドリブルの成功率とシュート数の多さから攻撃面では多くの貢献をした結果も伴なって
総評は7.6と非常に高い数値で評価されています。
悪く無かったという見方も勿論できるポイントであります。
そして後半で得点が欲しい時にラメラと交代して入った、
マルキーニョがほぼ一切機能しなかったという事も挙げられるのではないかと思います。
図8:交代後 |
ゼーマンはおそらく後半になり縦への推進力が無くなってきた中、運動力の落ちてきたラメラと交代、運動量のあるマルキーニョを前線に配置する作戦を取ったのでしょう。
しかし単純にマルキーニョも昨季でSBをこなしたとは言え、前線はできなかったようです。
フィードを受けるシーンも何度かありましたが、中々ボールキープをする事はできませんでした。
それが故の攻撃の質の低下は避けられなかったと考えられるでしょう。
更に疲労のピアニッチと交代して投入された、フロレンツィもパス成功率に関してはデ・ロッシとの
同じ順位であり、中盤に求められた縦への前進という点で考えると、それを思う様にはできなかった事も大きかったのではないかと思います。(悪かったとは思わない)
更にこの試合、ローマが攻撃をした箇所はセントラル、右サイド、左サイドの中で
中央からの攻撃率60%と、圧倒的にペナルティエリア、バイタルエリア前を要する展開でした。
図9:攻撃の方面 |
- 後半は全体的に中盤の出来はあまりにも不安定で、一応前線のマルキーニョ・フロレンツィ共々ボールを前へ持っていく仕事をしっかりとこなせ無かった事
- バイタルエリア前までのボールキープをしっかりとこなせなかった事
- 後半から中盤の底上げを上手くできなかった事
交代の選手に求められる水準としては非常に痛手だったでしょう。
しかしフロレンツィに関しては、フィード性能トップクラスのデ・ロッシを差し置いて、多くのセットプレーを任される展開も沢山あり、U-21での活躍などや親善試合のリヴァプール戦での得点を含め、今後が非常に期待される選手の兆しなども多く見えました。
総評
ゼーマン政権になり12/13セリエA初の試合。
ホーム開幕戦で緊張の中、監督の思考する戦術を全体として実践できたのは評価に値したい。
全体的に守備固めをしてたカターニア相手に、両サイドの選手を上手く機能させた事は素直に評価に値する且連携面の出来は新チームとは思えないくらいの連携していたのではないかと考える。
問題点は残る試合展開ではあったが、黒星発進をしなかった事もよくやったと思う。
中盤のコンディションをしっかり整える事がまずは重要。
そして前線の決定力を高め、SBとWGとのコンビネーションをより大きく高める。
ペナルティエリア前でのポストプレーをチーム全体として磨いていく。
引き分けの試合だったが非常に楽しめた良い試合だった。
次の試合で初勝利、そして前向きに大きく繋げる事を期待する。